noteから撤退することに決めた。
厳密には完全撤退じゃないんだけど…… 2年前、好きだった同人作家さんが筆を折った。 何度も読み返してた小説サイトが突然消えて、Twitterで繋がってたから聞いたら、もう止めると言われて。 「書いてたもの、好きでした」とだけ伝えたら、「そういってくれる人があと二人ぐらいいたら、書き続けられたかも」って言われて、私の言葉が届いていたことと、私の言葉だけじゃ足りないことが分かった。 仕方がない。なにも返ってこないことを続けられるほど、根気があるひとはあまりいないよ。 今ならその人が言っていたことがよく分かる。 確かに、いかに自分が好きでやってることとはいえ、外に発してもなんにも返って来ないことをやり続けるにはモチベーションが続かない。 なにもいらないなら、はなから外に出してない。 好きでやってるんだろう、と言われる。 それはそうだ、と答える。 止めるだなんて、ただのかまってちゃんだろう、と言われる。 そうだろうね、と答える。 ほんとうに面白いものなら感想ぐらい貰えるだろ、と言われる。 それはどうだろう、と思う。 つまり、お前が書いているものはつまらないんだ、と言われる。 そうだね、と答えるしかない。 だからといって、なにも返って来ないものを書き続けるのには、限度があるんだよ。 手遅れになるまえに、後悔するまえに、感想は伝えなきゃいけない。 とはいえ、言葉で上手く伝えられないとか、上手く言えないから「好きです」しか言えないから書き込むにはしり込みすることもいっぱいある。 noteはこの「言葉」は比較的多い場所かも。 逆に言えば「言葉」しかない、と、ある人を通して見せつけられてしまったけれど。 ずっと気付いてたけど、目を逸らしてただけ。 長く、ずっとやりたいことがあって、大学時代に書いた中編が二本あるんだけど、それはテーマを同じで書いたものだからその2作と、新しく書き下ろす同テーマの中編を合わせて一冊にした本を作りたくて、それを自分用にとっておいて、それで小説書くのやめようと思ってる。 (んだが、今はちょっと気が変わって場所を変えて続けていく。 ……つもりでいる。今は、まだ。 ほんの少し前まで、続けてほしい、と言ってくれたのが親友ひとりだけだったのが、ひとりとまたひとり、3人になって、少しは意味があるのかな、書いててもいいのかな、って思った。) その一方で、ここ2ヶ月ほどずっと、お前に書く権利なんかない、と言われてる。 それもそうだね、とその人がそう言ってくる理由を見て、その人の倫理観から鑑みて、心の底から「そうだろう」と思ってる。 その人は私が本を作ることをゆるさないし、本当はnoteでも欲しがってくれる人がいるか聞いて、その冊数分だけ作ろうかな、とか思ってたけど……どうしようかな。 どこで呼び掛ければいいのか、分からないので、少し考え中。 noteには、もう居たくない。 なにせ、あの場所からは、すごく好きな作品をつくる人たちがいなくなっていく。 (きっと、そういう人ばかりいなくなるから、そういう場所なんだろう、という結論を出したところだ。) ひとりは「みんな死ね」って言っていなくなった。 どこにいったか、わからない。 ひとりは、鬱々としたものを抱えながら、しばらく何も言わないまま更新してたけど気づいた時には忽然と姿を消していた。 最初期のnoteの人と関わるきっかけをつくってくれた人だったから気になるけど、他のSNSからも消えてしまっていて、どうしているのかは何もわからない。メルアドも知ってたしやりとりもしてたけど、それ以上、探りまわることもしたくなかった。 ひとりは、去ることだけひとこと告げて、そっといなくなった。 半年ぐらい経って別の場所で繋がりを見つけた。もともと、noteという場所にこだわらない生き方の人だから、あれが一番よかったんだと思う。 ひとりは「旅に出る」っていって、でも一度は帰ってきたけど、戻ってきたところをしばらくして黙って去って行った。 もともと自由な人だから、今も別の場所でたのしくしている、と見ていると思う。 そして、つい先日「此処には言葉しかない」といって、ひとり去って行った。 別の場所で御挨拶出来たけど、やめたことで楽になったようだった。 苦しそうなのをずっと黙って見てたから、これで本当に、よかった。 もちろん他にもやめていったひとはいるのだけれど、特に印象的だったのはこのひとたち。 つくるものが好きだった。作品で語るようなひとたち。 それを引き留めようとした人も知っている。 note上で呼びかけた人も、実際に引き留めようと直にコンタクトを取り続けた人も。 その人たちが優しくていい人なのは知ってたけど、引き留めるのはやめてほしいと思った。 ずっとnoteは籠だと思っていたから、此処じゃない場所の方が楽に往ける人は多いって感じてたから。 それに、幾人かは他の作品公開場所も知っていたから、そこで見続けられるならそれでいいと思った。 もともとブログの畑にいたから、個人サイトを回り動くのは苦じゃない。 noteは色々な人の作品をキュレーション的に見られるのはお手軽でいいけど、別に発表の場所はそこだけじゃない。 わざわざ居心地が悪い場所に、とどまることもないだろう。 ここでかなしい、むなしい思いをするぐらいなら、出ていくでも、消えるでも、自分にとって満足のいくように、自分の思うこと、好きなことをできる環境をどうか見つけてほしいと願う。 これもまた、引き留める人と同じぐらい、身勝手なのことなのだろうけど。 わたしにとってもその人が目の前から去ってしまうことは悲しいけど、それよりももっといやなのは、その人が作れなくなってしまうこと。 だから、その人たちはこれでいいんだろう。 書くことをやめてしまった同人作家さんのことを思い出すのも、こういうことが続いたからかもしれない。 「あとひとり、好きだと言ってくれたらつづけられた」と、かなしそうだった言葉を思い出す。 上記の人たちは特に「人に与える」側面が強かったなぁ。 怖いほどの凄まじさを持っている人もいて。 でも、たぶん、ここでは彼らがわたしたちに「与えてくれたモノ」に対して、その人たちが「望んだモノ」は返って来なかったのではないか、とぼんやり思っている。 もらったものも、返せなかったものも、あの檻に収まるようなものではなかったのかもしれない。 その人に続けてほしいなら、その人が望む形で、与えてもらうばかりでなく、見せてもらうばかりでなく、きちんと返すことが大事だなぁ、と日々思うところだ。 彼らのことを忘れないようにする。 でも、その一方でわたしのことは気付かずに居てくれるといいと思っている。 いなくなっても、どうぞ気付かないで欲しい。 嫌いになってやめるわけじゃない。 ただ、あの場所にいたら要らないものに足を取られて、大切なものを無くしてしまいそうだから、さようなら。 PR |
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音が鳴る。
今日も僕はそれを木陰から覗き見る。 中庭では、ダンスサークルがくるくると楽しそうに日差しを浴びている。 ホップ、ステップ、ジャンプ。 皆一様に、一揃いに、舞う。 音が、鳴る。 僕が普段聴かないような、電子音鳴るダンスソング。 興味ないような振りをして、どこにも繋がっていないイヤホンを耳に差す。 端子の先はポケットのなか。ミュージックプレイヤーは鞄のなか。 楽しく鳴る音を盗み聞いて、弁当をつまんで横目に彼女を探す。 日差しの真ん中で踊る、彼女の姿を。 真っ白な細い腕と細い首。 しなる背中に軽やかに空を舞う足先。 僕はいつも日陰からそれを見ている。 木の陰に隠れて、暑い日差しを受ける彼女を見つめる。 冷たく、黙って、音のない世界を装いながら盗み見るのだ。 やがてサークルの練習も終わって彼女はいつも通りタオルを肩にかけて…… ん? いつもならまっすぐ部室棟に向かうのだが、今日は校舎に用があるのかいつもとは別方向に歩いてくる。 僕がいる、木陰の方へ、まっすぐと。この先にある、校舎口目指して。 とはいえ、まぁ、僕のことなんか知りもしないだろうし、ただ、何事もなく通り過ぎるだけだろう。 と、弁当に向き直る。 でも、なんだか味がしない。 早く彼女が過ぎることを祈りながら、僕はただ、うつむいて米を口に運ぶ。 と、ぼと、と目の前に白いものが舞い落ちる。 「あ、ごめんね」 明るい声。 ぱっと顔を上げれば、彼女の姿。 いつも首に巻いているタオルがない。 そうか、と目の前のそれを拾い上げて、 「はい」 と、渡す。 暗いところでうつむいていた僕には、逆光で彼女の顔も見れない。 眩しく目を眇める僕の手からタオルが抜ける。 受け取った彼女が笑った吐息が聞こえる。 ふと、彼女が身を屈めた。 日差しが遮られて、僕は初めて彼女の顔を見る。 まっすぐ僕の目を見て、名前も知らない彼女が言う。 「音成(おとなり)くん、いつも見ててくれてアリガト」 そう囁いて、離れていく。 頬が熱かった。 でも、気づかないふり。 全部、日差しのせい。 日差しの真ん中で踊る、彼女のせい……―― 今日も、音が、鳴る。 僕はイヤホンを外して、日差しの中を歩き始める。 ――了 |
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きみと肩を並べて歩く。
ひとりきりの帰り道。 いつだったか、いつから、ひとりではなくなったのだろうか。 それは、もう、思い出せないほど昔のはなし。 今日も重たい鞄を抱え、あまつさえ疲れに沈む体に傘を携えて歩く。 今日の話題は、昨日から始まった鏡の展覧会のこと。 「昨日から始まった展覧会のことだけど」 「ああ、あれね。鏡の展覧会」 「そう、面白そうだよね」 「そうだね」 「なにが映るんだろう」 「それはなんでもだよ」 「きみも映るかな」 「僕は行かないから映らないさ」 はた、と立ち止まる。 空気がしん、と静まり返る。 道往く人が立ち止った僕を怪訝そうに見ては過ぎていく。 時は流れていく。 「……一緒に来てくれないの?」 「僕とじゃあ、つまらないよ」 「つまらなくなんかないさ」 「つまらないよ。絶対に」 「それでもいいんだよ」 「それじゃ駄目だよ」 「……どうして?」 きみは言い淀む。 その逡巡を僕は知っている。 彼が何と答えるか僕は知っている。 知っているけど聞きたくなくて、でも、聞く。 「全部なかったことにしてさ、ひとりでいきなよ」 ――それは多分、別れの言葉だったんだろう。 その言葉を問いただす時間はなく、僕は後ろから知らない呼び声に呼ばれた。 おおきな、おおきな、悲鳴のような声。 車のタイヤがあげる、断絶の金切り声。 とっさに鞄で頭をかばう。 強い衝撃が僕を襲う。 なんとなく、僕はひとりでよかったのだと思った。 こうして事故に遭っても誰も巻き込まない。 道路に投げ出された傘がぽつん、と悲しげにしているけれど、ただそれだけだ。 ただ、それだけで、誰も何も喪っていない。 強い衝撃があったけれど、ただそれだけで、幸いにして車は止まったらしい。 事故は大ごとにならず、僕も、たいして怪我もしていない。 周りの人がばっとかけよってくる。 そのなかにはクラスメイトや委員会の人など見知った顔もいた。 皆一様にほっとした顔でこちらへ話しかけてくる。 そのなかにひとり、そっと僕の鞄を差し出してくるひと。 有りがたく受け取って中身を確認する。 携帯も、電子辞書も、体操服のおかげなのか無事だ。 ほっとひといき吐く。 あとは下に沈んだ教科書類だけだけど…… 「あ」 あと、もうひとつ。 僕にとって一番大切なものが入っている。 それは、絵本だ。 僕がずっとむかし、記憶にないほど昔、両親が僕に作ってくれた“僕”の物語。 その当時、生まれた子どもの名前を入れる絵本をつくることが流行だった。 渡されてからずっと、大切にしていた。 探す。 大切な“僕”の姿を。 そして、とっさに頭をかばった鞄のなか。 僕が子供のころからずっと大事にしていた“僕の本”が、奥の方でぐちゃぐちゃになってその姿を晒していた。 「……“僕”?」 問うても、いつもの声は聞こえない。 いつも当たり前にいた、友達の声が聞こえない。 『全部なかったことにしてさ、ひとりでいきなよ』 あれはきっと、「全部なかったことにしてさ、ひとりで“生”きなよ」と、言っていたのだと、ふと気づく。 それはきっと。 たったひとりの友人だった彼を殺してしまうこと。 それが彼の望みだったこと。 僕はそれを望まなかったこと。 その後悔に、頁を綻ばせた本を抱いて、雨の中、僕は泣いた。 ――了 お題:イマジナリーフレンド |
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