いつも往く公園に、必ず黒のハードカバーを持った少年がいる。
わたしはいつも彼を横目に木の下に陣取ってスケッチをする。なにげない日常の風景。彼も写ったり、写らなかったり。ただ、同年代の少年少女たちが遊具で楽しそうに遊んでいる姿を対比すると、彼の存在はやたらと浮いて見えるのだった。 そんな生活が続いて半年。 「ねぇ、いつも何書いてるの?」 流石に気になって尋ねてみる。向こうもこっちの顔を覚えたみたいで最近は会釈もしてくれるし、まぁ、話しかけるぐらい良いだろう。 彼はほんの少し目を泳がせて、ぽつり、と言った。 「自分で……自分をわかるため」 絞り出すような声。彼は目線を逸らしたまま、続ける。 「何考えてるか、自分でも分からないから……だから、書く。それだけ」 それは、わたしも似たようなものだと思った。毎日描き続けるだけの生活。その意味。 それが絵か、文字か。ただ、それだけのはなしだったのだ。 了 PR |
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我ながら友人には恵まれていると思いますが、如何せん人数がいないので、遊びに行くときとかめっちゃ困りますね。
今も、ペルソナ20thフェスにいっしょに行ってくれるひとを探し中。 そんなこんなで、なんとなく文章を書きたい気分だったので、ちょっとわたくしの友人のおはなし。 我が友人たちはどことなく尖っているというか、なんか何処かを突っ走っております。 いや、わたしも人のこと言えたモノではないのですが。 ある友人は、折り本発行した『夕夜ノ狭間ニテ』のことを「宇宙の果てでリア充を爆破するはなし」とのたまう尖り具合です。 この要約の仕方だと話がすごく壮大に見える…… そんな友人に「ペルソナ20thフェス一緒に行こうよ~」と連絡したところ、「ちょうどテスト時期でな……」(教師側)という返答。 確かに。12月上旬たしかにめっちゃ忙しい時期だね…… ただ、このマトモな回答のあとに続く文章が問題。 「仕事が一番忙しい時期だからいけない。テスト滅ぼす。学校生活楽しいです。うらやましい。ころす。あたるといいね。外れろ」 合間合間に挟まった本音と建前が余計に哀愁を誘う…… あと、ひらがなの使い方が上手い。 言葉選びが流石だ、と褒める返信をしたところ「あやまるからゆるして」と言われました。 別に怒ってないよ。 ……お仕事頑張ってな。 |
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湖の向こうには妖の町がある。
そんな言い伝えが村にはあった。 赤い金魚しかいない湖。河童も川姫もいない、ただの湖。 水面を覗いても決して見られない世界。 幻想はただひっそりと其処に在り続けていた。 ある日、湖を埋め立てる話が持ち上がる。 「赤き神に祟られるぞ」 村の老人たちは言った。しかし、誰もが老人の戯言と笑う。 そして湖は容赦なく埋められた。 上には建物が建ち、人が住んだ。祟りなど起こらない。 ただ穏やかに時は過ぎた。 しかし。子供だけにしか広まらない噂があった。 「あそこの水溜まり、赤い金魚がいるよ」 大人たちに水溜まりは見えていない。そもそも水溜まりに金魚はいない。 けれど確かに広がるその噂。幻世の世界。 今も何処かで彼らの水音。 |
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