「シアンってさ、将来の夢ってある?」
そんな唐突な友人からの問いに、シアンは怪訝そうに目を細めた。 「夢……ねぇ」 とりあえず考えてみる。 夢というほどのものではないのだろうが、望むことはいろいろあった。 迫害されることなくゆっくり暮らしたい。 母にもっと楽をさせてあげたい。 父が思う存分研究を出来る環境が欲しい。 レンクトと対等に話し合える関係になりたい。 ……どれも、夢、というほどのものではない気がする。 「…………」 「なんかないの?」 「……夢、というほどのものでは」 「もうそれでいいよ」 仕方なく考えたことを話す。 レンクトはそれを黙って最後まで聞いた後、僅かに苦々しさの滲む声で笑って言った。 「僕なら簡単に叶えられるような夢だね」 「……それを夢というのであればな」 「それもそうか」 くすくすと笑う。 つられるようにシアンも思わず笑ってしまった。 確かにレンクトからすればそれは夢でもなんでもない、些細なことなのだろう。 シアンにすれば難しいことも、レンクトなら。 彼に不可能なことは、とても少ない。 ――ただ、ある一つを除けば、だが。 「レンの夢は?」 「ん? 僕の夢?」 シアンの問いに、レンクトは嗤った。 笑うことしか出来ない、というように嗤う。 「外に出ることだよ」 「…………」 「ねぇ、シアン?」 「……僕たち、逆だったら良かったのにね?」 |
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