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Violet
 菫色の夢を見た。

 汚い青い毛布と脆い赤い布切れを繋ぎ合わせた、紫などと呼ぶのもおこがましいほどの酷い色。

 けれど、過去の僕たちはそれが紫だと信じた。
 ただそれだけで十分だった程、満ち足りた色だったから。
 紫に似ていれば多分、それで良かったから。

 体中に紫色の痣を作って。
 それと同じようで違う色を身に纏って姿を隠す。

 そうやって同じモノを分け合って、僕らは共に生きていた。
 ずっと共に在って、それはこれからも。
 それはきっと、永遠であるのだと。

 と、思っていたのはどうやら僕だけで。
 そう気づいた時にはすべてが手遅れだった。 

 知らぬ間に拓けていた世界へ、君は首に赤い布を巻きつけて踏み出し、たった一枚の布に足を取られた僕は共に逝くことを選べなかった。

 嗚呼。

 もう一度。
 もう一度君に逢えるなら。

 今度こそ僕は君と共に行くだろう。
 何処へでも、何処へだって連れて逝く。

 君であれば、君がいればそれで良かったと、今更気付いたのだ。

 一からやり直し続けても、何度でも僕はきっと君を選ぶだろう。
 此の世界でも、どの世界でも、僕は君と共に在る。

 でも。
 一枚の毛布に共に縋ったきみはもう、此処にはいない。

 だから、

 


 【お題】一枚の毛布・Violet・一からやり直し続けても

 菫の花言葉は「小さな幸せ」。
 じゃあ、それが枯れたらどうなるのでしょうね‥‥‥?

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【2013/03/27 01:28 】 | 掌編 | 有り難いご意見(0)
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