いつも往く公園に、必ず黒のハードカバーを持った少年がいる。
わたしはいつも彼を横目に木の下に陣取ってスケッチをする。なにげない日常の風景。彼も写ったり、写らなかったり。ただ、同年代の少年少女たちが遊具で楽しそうに遊んでいる姿を対比すると、彼の存在はやたらと浮いて見えるのだった。 そんな生活が続いて半年。 「ねぇ、いつも何書いてるの?」 流石に気になって尋ねてみる。向こうもこっちの顔を覚えたみたいで最近は会釈もしてくれるし、まぁ、話しかけるぐらい良いだろう。 彼はほんの少し目を泳がせて、ぽつり、と言った。 「自分で……自分をわかるため」 絞り出すような声。彼は目線を逸らしたまま、続ける。 「何考えてるか、自分でも分からないから……だから、書く。それだけ」 それは、わたしも似たようなものだと思った。毎日描き続けるだけの生活。その意味。 それが絵か、文字か。ただ、それだけのはなしだったのだ。 了 PR |
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