「この子に触らないでッ!」
「大丈夫。大丈夫だよ、真朱」 妻に不自由をさせまいと、彼は彼女が望むもの全てを与えた。 広い家に大きな庭。 そこに佇む青く深い池。 そして、自分の似姿の子。 全てを与えて、彼は愛しい妻を家に留め置いた。 それは、いつ襲い来るか分からない敵に備えてのことだったのだが。 しかし、そんなことは彼女には関係がない。 彼女が、真朱が一番欲しかったのは愛だ。 けれど、仕事にかかりっきりの彼にはそれだけが容易ではなかった。 もちろん彼なりに彼女を愛していた。 だが、伝わらぬ愛など無いに等しい。 彼女にとって、この家はさながら牢獄のようだったのだ。 (貴方が愛してくれないのならこの身など朽ち果ててしまっても惜しくない) PR |
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