色々バタバタしてるうちにあっという間に4月になってしまいました……もう4月も終わりか……
月イチぐらいはブログ更新しよう、ってなわけで、先日渋谷のエドワード・ゴーリー展に行った話でもしようかと思います。
少々絵本の内容など触れますので、ネタバレ避けたい方はご注意ください。
先日、4月8日から渋谷の「渋谷区立松濤美術館」にて開催中の「エドワード・ゴーリーを巡る旅展」へ行ってきました。
エドワード・ゴーリーとは絵本作家で、子供向けとは思えない黒い細い線での書き込みがエグい、内容も良く言えばダークさに満ちた……なんの罪もない子供が理由もなく死んでいく絵本などを描かれる作家さんです。
大人向け絵本としておすすめされることも多いですね。まぁ、内容的に子供に気軽におすすめしちゃ駄目なやつですからね。
小学校高学年くらいから、人を見ておすすめすると沼に落とせるタイプの作家さんですね……
代表作はやはり、ABCの名前順に子供が理不尽に死んでいく姿だけが延々と描かれるアルファベットブック『ギャシュリークラムのちびっ子たち または遠出のあとで』、裕福な生まれの少女が、父が戦死したのちどんどんと没落して最後まで不幸を一身に浴びる『不幸な子供』、謎の生き物が平和な一家に突如として出没し好き勝手に暮らし始める『うろんな客』あたりでしょうか。
『うろんな客』はハッピーエンドなのでオススメです。誰も死なないので。
そんなこんなで現在開催中の「エドワード・ゴーリーを巡る旅展」です。
こちらの看板に描かれている絵こそ『うろんな客』の一幕。
スツールにそっと座っているのがうろんな客です。かわいいですね。周囲からは戸惑いを感じますね。気持ちは痛いほどわかりますね。
中は入ってすぐに受付、その左手側にホールとショップがあります。最終的にこちらのホールに戻ってくることになるので、ショップはお目当てがあれば先に、絵を見てから軽く覗く程度であれば帰りでもいいかと思います。
広くはないので来たときが空いてるタイミングであれば先に見たほうがいいかもしれません。
展示室は地下1階と2階の展示室にわかれています。
地下1階は、少年、青年期の作品、そして絵本作品の原画がメインです。
上記に上げた『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『不幸な子供』『うろんな客』の原画もここ。
展示のスタートにある、幼少期の絵が非常に可愛らしくて、先に進めば進むほど「なにがどうしてこういう画風に……」という気持ちになれること請け合いです。
あと、ゴーリー作品では人間の子供は酷い目に遭いますが、必ず猫だけは無事なのですが幼少期の絵の時点で猫がいます。猫かわいい。猫に限らず動物が好きなんだろうな……
さらに、13歳あたりで描いたとされる、骨のような手が何かを持っているイラストカード(1冊に収められたポートフォリオのようです)も展示されているのですが、これはもう作家となった頃の作風を存分に感じさせてくれます。
不吉なタロットのようなイラスト群です。
俗っぽく言えば『厨二病』ってやつなんでしょうけど、骨の手の魅せ方がとにかく完成度が高い……
そこから「ゴーリーと子供」を主題として、『不幸な子供』や『ギャシュリークラムのちびっ子たち』の原画が並びます。
とくに『不幸な子供』は全ページあるんじゃないかな……話が進むごとにやつれていくシャーロットの姿をじっくり見ることができます。つらい。
こちらはとにかく背景が暗い作品で、ゴーリーの細い線で書き込まれた緻密な背景が原画でじっくり味わえます。
こちらの作品は全ページに必ず怪物が紛れ込んでいるので、暗い背景にひときわ黒く見え隠れする尻尾を探すのも楽しいですね。もうそれぐらいしか楽しいところを見いだせない作品ですからね……
離れてみると真っ黒に塗りつぶされているように見える箇所も、全て線で構成されて黒く見えているだけ、っていうのが大半なので、どのページも圧がすごいです。
ここまでの書き込みは、原画自体が絵本と原寸サイズで描かれているから可能なんでしょうね……それにしたってえげつない書き込みなのですけど。
個人的には『敬虔な幼子』の原画が印象に強かったです。黒が多い世界で白く描かれる幼子の姿が異様で……
『敬虔な幼子』は、盲目的な敬虔さを持つ少年の、神を愛し敬虔に生きた姿を皮肉っぽく描いた作品です。
幼子・ヘンリーは己を全く不幸とは思っていなさそうですが、とにかく幸薄く幸せそうには見えない白い立ち姿が目を惹きます。
こちらも悲劇的な結末に向かっていく物語ですね。まぁ、ゴーリー作品で主題に子供が出てきたら覚悟が必要ですよね……
続いて「ゴーリーが描く不思議な生き物」を主題とした展示に移り変わります。
こちらは謎の生物から蟲、謎の人形に至るまで人外が勢ぞろい。
当然『うろんな客』の原画もここ。
このブースの大半を占めるのは『狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動』の原画です。
実はこの展示を観に行くまで『狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動』は読んだことがなくて、というかゴーリーは日常的に行ける範囲だと取り扱ってる本屋自体がなくて今の今まで手に取る機会がなかったんですが、もうこの原画見たら欲しくてたまらなくなって、昼食とりながらヨドバシドットコムでポチりましたw
ゴーリーの絵本、ヨドバシドットコムで買えるじゃん! それが一番びっくりしたわ!
このお話に出てくる不思議な生き物たちは4人(4匹?)。
毛むくじゃらの身体にローラースケートを履いたスクランプ。
白い布を被って頭に長いリボンを付けたナイーラー。
全身真っ黒で、どこかトカゲのような姿かたちをした長い手足のフィグバッシュ。
片腕は布巾で釣り、片足は既になく、松葉杖をついたフーグリブー。
奇妙でなんだか愛らしい4匹がお互いに、クッキーの型を持って襲いかかったり、パイの生地で包もうとしたり、ヘチマで襲いかかったり、壺の中に押し込んだり、カバンから飛び出して脅かしたり、時には一緒におやつを食べて赦し合ったりして悲劇的な結末に向かっていくお話です。
やっぱり悲劇的なオチなんだね!
脈絡もなく突然戦いの幕は開き、最後の最後まで説明されることはなく4匹の争いは続いていきます。
その脈絡もない戦いの背景が禍々しいことよ。
暗い空に黒い雲、そして、なによりも目を惹く一切説明もされない、あることに触れもしない真っ黒な指のオブジェ。
指のオブジェ、めっちゃ怖いんですが。
とくに説明もなく立ってるの怖いし、壊れて無常に転がってる第一関節から爪先が怖い。
なのに、不思議な生き物たちが戦う姿は妙にユーモラスで可愛らしい。
なんだか背筋がモゾモゾとする作品群です。
奴らが可愛いんでなんか見ちゃうんですよね。そんでもって背景がかわいくない。
絵本はゲームブック方式になっており「あなたがこう思ったら何ページへ、思わなかったらこちらへ」という形式なので、読み物としてもひねりが効いていて面白いです。
選択肢も皮肉っぽいので、なんとも言い難い味わいがあります……
あと、タイトルにある「ブラックドール」が表紙にしか居ないし、表紙は表紙で禍々しくて笑うしかない。
表の表紙見るだけで「うげぇ」ってなること請け合いなので、是非ともアマゾンかなんかで『狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動』の表紙を拡大して見てほしいです。
一応エンディングが2種類に分岐するんですが、真のエンディングは裏表紙だろうと思われます……
真エンドってゲームだと辿り着くと達成感あるもんですが、これに関しては脱力感満載。
今回はこの原画が見られただけでも大収穫でしたね。
2019年の練馬区で開催されたときにもこの4匹は見たような気がするんですが、ここまで枚数が多くなかった記憶が……あと、まだ日本語訳の絵本が発売されてなかったと思う。
ーーそして、この地下1階で満足しすぎて2階はふら~っと見て終わったのでした。
1フロア目だけで2時間過ぎたもんね……なんなら狂瀾怒濤だけで並び直して4ループしたからね……!
2階こそ前期後期で入れ替わる絵が多めなので真面目に見るべき!
いや、もちろん真面目には観てきたんだけど……狂瀾怒濤に意識全部持ってかれちゃったからさ……
展示室入口には『ドラキュラ・トイシアター』のでっかいタペストリーも(タペストリーは写真撮影OK!)。
こちらの原画も2階展示室内にあります。これは原画も大きめでしたね……まぁ、絵本用ではなくポスターだからなんでしょうけど……
2階にはソファ席があって絵本を読めるコーナーも設置されています。
ゴーリー初見さんにも優しい!
なんなら2階で絵本読んで内容ばっちり頭に入れてから、地下1階で絵本原画見るのも良さそうですよね。
そして、2階展示室は比較的可愛らしい作品が揃っていますね。
本文はエドワード・リアが手掛け、エドワード・ゴーリーが挿絵を描いた冒険譚『ジャンブリーズ』、モノクロがメインのエドワード・ゴーリー作品でも異色の、蒼い背景が美しい、2匹の犬の旅物語である『蒼い時』など。
あと、ゴーリー挿絵の『赤ずきん』とかありましたね。バッドエンドに変わってるんじゃないかと不安を感じる。
ゴーリー自身がバレエが好きだったのもあり著作にバレエ作品もいくつかありますが、そちらの原画も揃っております。
皮肉っぽさは当然ありますが、悲惨な感じはないのであまり陰鬱にならず見られますね。
あとは、『ミステリー!』という海外のテレビ番組のオープニングアニメーションをゴーリーが担当していたことがあるそうなのですが、そのアニメと背景原画も展示されています。
無限ループで再生されるアニメーションがおどろおどろしくて良い。
今回の展示は会期が前期後期に分けられていて一部内容に入れ替えがあるので、私は5月後半にまた来訪予定です。
次こそは狂瀾怒濤に飲み込まれないように2階もじっくり楽しみたいところです……
あと、こちらの建物、真ん中が吹き抜けになっているのですがそこがなかなか良い眺めでして。
橋もいいですが、扉の装飾も素敵ですよね。
決して広い美術館ではないのですが開放感を感じられて素敵な場所です。
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