鮮やかな声で、女が嗤う。
「ねぇ、久しぶり。まだ生きてるの?」 その声は嬲るような響きを持っていて、それでいて子供のような無邪気さを合わせもつ透明な声だった。 彼女はずっと、そうだった。 ずっとこうやって嗤って、俺たちを揺らす。 「ねぇ、今カノジョとかいるの?」 いないよ。 「ならさ、私とかどう?」 冗談はやめてくれ。 「嘘じゃないよー? 本気なんだけどなぁ」 そんなこと言って、今までの男たちのように俺のことも捨てるつもりなんだろう? 「えー、わたしそんなキャラ?」 キャラとかじゃなく、本当のことだろう? 「みんなが私を捨てたんだってぇ。私来るもの拒まず去る者追わず、だし?」 ……去る者、ねぇ。お前が関わった男たち、皆死んでるのにか? 「…………」 「貴方のこと、本当に好きだったよ……さよなら」 電話越しの声が遠い。 掠れていく吐息。 静かになる通話口。 全て悪い夢だと思いたかった。 PR |
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