月が深く誘うような夜だった。
「ちょっと、なんですかいきなり」 「んだよ。いいだろ」 窓から月を背負って室内に侵入してくる人影。 それは夜色を纏う少年だった。 「ギャーギャー喚くなよ。いつものことだろ」 「知ってますか? こういうの、不法侵入って言うんですよ?」 「警察に連絡でもすれば?」 「しませんよ」 「だよね」 俺よりも年下の華奢な少年。成人もしていないだろう。 それでもなんとなく気圧されてしまう。 その背に纏う重さが俺なんかよりもよっぽど濃い日々を送ってきた証左のようで、圧されるように流れるように彼に従ってしまう。 彼は決まって夜、ふらりと現れては何事もなかったかのように俺の隣に居る。 昔からそうだったかのように、それが当たり前のことのように。 そして、決まって彼はごろりと俺のベッドに寝転がる。 それだけ。 本当にそれだけで、食べ物を求められたり、盗みを働いたりは絶対にない。 猫のようにくるりと丸まって、いつもすぐに寝息を立て始める。 言葉を交わす暇もない。 だから、いつも俺はため息をひとつついて毛布をかけてやる。 穏やかな眠りに身を焦がす黒猫に、ほんの少しの優しさを。 どうせ朝になったら勝手にいなくなる。 何処から来たのか、どうして此処に来るのか、それは分からない。 分からないけれど、まぁ、それでもいいかな、と思っている。 灰かぶり然り、鶴の恩返し然り、正体のわかった物語の結末は決まっている。 そっ、と物音を立てないように彼に近付く。 そして、ふわりと白い布をかける。 細い、その肢体が覆い隠される。 近くで見たあどけない寝顔は年齢不相応で、彼を随分と幼く見せた。 嗚呼、まったく…… こんな綺麗な顔で眠っている人が目の前にいたら、と思うと、白雪姫に出てくる王子の気持ちも分かるというものだ。 「油断しすぎだよ」 夜の深みに誘い出されたようで、あまりいい気分ではないけれど。 「んっ……」 彼が身じろぎする。 その細い首筋に手を這わせ。 「ねぇ」 その細い首筋から浮き出す骨を唇でなぞる。 耳にかかる息が熱い。 「俺さ、何にも知らないんだ」 こんなに焦がれても。 「何にも知らないのに」 こんなに焦がれているのに。 「それでも、いいって思えてたのに」 この関係に不満を覚えたことはないけれど。 「もう……」 全部夢じゃなかったのかと怯えるだけの朝は、もういやだ。 「っ! はぁっ……! はぁ、はぁ」 これ以上は駄目だと理性が告げる。 これ以上深みに嵌れば抜け出せないと警鐘が鳴る。 口元を拭って、ようやくの思いでベッドから離れる。 もう今日は彼のことを見ないと決めた。 どうせ朝になったらいつも通りだ。 その時。 「ねぇ……もう終わり?」 誘うような、夜の声が聞こえた。 友「ホモォ ┌(┌ ^o^)┐」 私「え」 友「ホモォ ┌(┌ ^o^)┐」 私「……( ゚∀゚)」 ほも書けって言われたけど無理だったぜ! PR |
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