カメラを構える。
視線だけに意識を向け、息を殺す。 そして、「その時」を待つ。 ただ、それだけ。それだけのこと。 それの繰り返し。 彼にとってそれは日常で、ごくありふれた当たり前のこと。 だが、人はそれを地味だと、無意味だと笑う。 それを気にしたことはなかったのだが。 彼が撮るのは空だ。 青く深い空も、灰がかった薄青も、どんよりと曇った灰空も、雨の降る黒い空も、朱に染まる夕暮れも、星を飾る夜空も、どれも等しく。 悠久に変わらぬその姿を仰ぐように、録り続ける。 記憶だけでなく、記録に残していく。 しかし、その日は酷く晴れていたものだから、あまりの眩しさに彼は視線を落とした。 少し眩む視界の先で、自分の影がじんわりと揺らめく。 焼けた世界で手元が狂った。 パシャッ、という聞きなれた音が無常にも耳に届く。 ああ、とため息をつくと、シューッと低くフィルムの巻かれる音。 もう一度ため息をつく。 最後の一枚。 そこにはきっと、影で立ちすくむ自分の姿があることだろう。 【お題】 さわやかリンゴジュースの呪縛に囚われる……無理でした。やっぱり。 PR |
|
忍者ブログ [PR] |