職場では上を鉄パイプが走っているし、街中はビルや電線で四角く切り取られているので、こういうただの青空がすごく貴重に思える今日この頃です。
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今、オスカー・ワイルドの『幸福な王子』を読んでいます。
はるか昔に絵本では読んだことがあったものの、文庫版の原典を訳したものを読むと当時とは異なった側面が見えてきて面白いですね。
寓話なので、説教的な面も宗教的な面もある。
むかしは「めでたしめでたし」で良かったものが、自分のなかでそれだけでは終われなくなったり。
大学は経済学部だったため、資本主義と宗教は切り離せず、宗教の成り立ちや考え方についてもそれなりには勉強をしていました。
おかげで『幸福な王子』の裏側に敷かれている志向が分かるのが面白い。
というわけで、『幸福な王子』を下敷きにひいた話を書こうとしていて、今は繰り返し一生懸命読んでいるところです。
大体こういうのが実を結ぶのが一年ぐらい後ですね(遅い)
のんびりやります。のんびりすぎるけども。
で、そのお話の主人公の名前を今考えているところで。
プロット立てのときはずっと「ツンケン天邪鬼系男子」と呼んでたせいで、もうなんかそれが自分の中で定着しつつあって名前を考えられないという。
ちゃんと考えてあげたいんですけどね、さすがに。
相手役の女性の名前も考えなきゃいけないので、さて、どうしようかな(笑)
某ゲームのディレクターさんが主人公の名前を付ける際に「名前は願いだから、よく考えてつけて愛してあげてほしい」という話をされていて、ああ、なるほどなぁ、と思ったのですが。
どんな立ち位置であっても、たとえたったひとつの話のなかで終わってしまう存在だとしても、名前を付けるからにはきちんと意味をあげたいなぁ、なんてことを思ったりもします。
とはいえ、この話はもうちょっと長く展開できそうな構想でいるので、使い飽きない名前にしよう……
せっかく原典もあることだし、うまく関連付けられたら面白いんですけどね。
まぁ、『幸福な王子』には、王子の名前など、欠片も出てこないわけなんですけども。
そうそう、『幸福な王子』なのですが、むかしは「愛情深い王子が善意をばら撒く物語で、最後はツバメと一緒に楽園で幸せになれるはなしだなぁ、哀しいけどハッピーエンドだなぁ」と読んでいたのですが、今改めて絵本じゃないもので読み返すと表情が異なっていて怯えています(笑)
幸福な王子は生前城のなかから出たことが無くて、壁の向こうの不幸など何一つ知らないままで若くして死んだこと、死後に像になって城の外に出て不幸な人々を知ったこと、それってつまり「死んでから『幸福』だったことに気付いた王子ってこと?」と思って震えました。
王子自身も「快楽が幸せであったのなら、わたしは幸せだった」と言っているので、生前は幸福という感覚さえ知らないまま幸せだった可能性がある……
その不幸のなかで、そこから救う手だてとしてツバメに剣のルビーや瞳のサファイア、体にまとっていた金箔を貧しい人々に分け与えるわけですが「これが大学時代に勉強した隣人愛というものか……」とさらに震えます。
神を愛し、自分自身を愛し、それと同じぐらい隣人のことも愛さなければならない、という旧約聖書の教えを実行しようとする王子、その使者のツバメ……
童話というよりは、やはり教えを含む寓話なわけですが、下敷きにある文化を知った後に読むと、キリスト教圏では日本で読まれているのとはやっぱり違う意味があるのかな、なんて思ったりもします。
そして、物語の最後、王子の鉛の心臓とツバメは塵の山に捨てられ、「町じゅうで一番貴いものをふたつ持ってきなさい」という神の命により町へやってきた天使に拾われるわけですね。
そして、そのふたつを持ってきた天使は「お前の選択は正しかった」と神に言われる。
つまり初めから正解があったもので、だから初めから一番をふたつ。
間違ってたらどうなってたんだろう……
そこから神はツバメは「神の庭」で永遠に歌い続けるようにし、王子は「神の黄金の町」で神を褒め称えるようにする、という終わりかた。
穿ちすぎじゃなければ、この二人は会えなさそうな感じ……
キリスト教ではこの世は仮の世で、死後に審判を経て復活した暁には神の作った楽園に行って永遠の命を得る、という教えもありますし、そこから考えれば日本で言う「めでたしめでたし」なんでしょうけど。
知識として知っていても馴染みがある考え方でもないので、なかなかうまく飲み込めないままここ数日考えております。
まぁ、物語っていうのは人によって見える側面が違って面白いですよね。
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そんなこんなで、上記の話とはまったくべつですが創作ブログのほうで短期連載を始めます。
連作掌編で、一話完結型かつ連載型で、ひとりの少女の恋にまつわる物語を展開します。
週一更新になりますのでまったりお付き合いいただければ幸いです。
今週金曜日からスタート。
よろしければまたお付き合いくださいませ。それでは。
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