「この子に触らないでッ!」
「大丈夫。大丈夫だよ、真朱」 妻に不自由をさせまいと、彼は彼女が望むもの全てを与えた。 広い家に大きな庭。 そこに佇む青く深い池。 そして、自分の似姿の子。 全てを与えて、彼は愛しい妻を家に留め置いた。 それは、いつ襲い来るか分からない敵に備えてのことだったのだが。 しかし、そんなことは彼女には関係がない。 彼女が、真朱が一番欲しかったのは愛だ。 けれど、仕事にかかりっきりの彼にはそれだけが容易ではなかった。 もちろん彼なりに彼女を愛していた。 だが、伝わらぬ愛など無いに等しい。 彼女にとって、この家はさながら牢獄のようだったのだ。 (貴方が愛してくれないのならこの身など朽ち果ててしまっても惜しくない) PR |
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●メモ
碧の過去話(まだ深波にも逢ってない頃の話) 深波について ・深波については人間に恋して、そして悲劇を迎えた同類として知ってはいる。 ・碧はそんな深波を愚かだと思っているし、見下してもいる。 (ただ、碧も少なからずそういう目に遭うわけで、だからこそ深波は碧に会いに行ったんだろうなぁ、なんて思ったりね) 登場人物 魔王 碧(若)――まだ父が地帝なんで、実際にはまだ魔王じゃない。 何に対しても無関心。 勇者 未定――女。碧を魔王と勘違いして討ち取りに来る。 碧の母 真朱(まそほ)――夢魔。妖艶な女性。碧を愛している(独りの男として) 碧の父 静(せい)――地帝であり、地獄の主の魔王である。実は碧の他に子供がいる。 深波――煉獄の主。恋した人間の女を父に殺され、のちにその復讐(父を自らの手で討ち取る)を果たし煉獄の王の座に就いた。 メインテーマ 「魔王は魔王であるだけで悪なのか?」 サブテーマ 「無銘の幸福」 *碧 ・まだ人殺してない(というか殺すほど関心も持っていない ・手下のもの(人間)は勝手についてきただけで、やはり彼らに対しては無関心。 ↑ しかし、現世では人間が悪魔に誑かされたと勇者を担ぎ上げ。 *話の断片(思い付きともいう) 「お前をちょっとでも信じかけてた俺が馬鹿だったよ」 碧はうっすらと笑った。 口元から朱を流しながら、確かに。確かに彼は笑っていた。 愛しかけていた女の面影が哀しい。 ――嗚呼、本当に馬鹿みたいだ 振り翳す刃。 振り上げられた力は何処かに堕ちるまで止まることはなく…… |
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菫色の夢を見た。
汚い青い毛布と脆い赤い布切れを繋ぎ合わせた、紫などと呼ぶのもおこがましいほどの酷い色。 けれど、過去の僕たちはそれが紫だと信じた。 ただそれだけで十分だった程、満ち足りた色だったから。 紫に似ていれば多分、それで良かったから。 体中に紫色の痣を作って。 それと同じようで違う色を身に纏って姿を隠す。 そうやって同じモノを分け合って、僕らは共に生きていた。 ずっと共に在って、それはこれからも。 それはきっと、永遠であるのだと。 と、思っていたのはどうやら僕だけで。 そう気づいた時にはすべてが手遅れだった。 知らぬ間に拓けていた世界へ、君は首に赤い布を巻きつけて踏み出し、たった一枚の布に足を取られた僕は共に逝くことを選べなかった。 嗚呼。 もう一度。 もう一度君に逢えるなら。 今度こそ僕は君と共に行くだろう。 何処へでも、何処へだって連れて逝く。 君であれば、君がいればそれで良かったと、今更気付いたのだ。 一からやり直し続けても、何度でも僕はきっと君を選ぶだろう。 此の世界でも、どの世界でも、僕は君と共に在る。 でも。 一枚の毛布に共に縋ったきみはもう、此処にはいない。 だから、 【お題】一枚の毛布・Violet・一からやり直し続けても 菫の花言葉は「小さな幸せ」。 じゃあ、それが枯れたらどうなるのでしょうね‥‥‥? |
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